認知症ケアの場面では
介護業界におけるバリデーション
認知症ケアの場面でここ数年注目されている考え方が、バリデーションです。介護業界におけるバリデーションは、認知症の人の感情を大切にするコミュニケーション技法を指し、感情や欲求を表に出したり、解決したいと思っている問題をクリアする手助けをするという目的を持っています。
ここで理解しておきたいのは、最終的な目的が「問題解決」なのではないということです。あくまでも、本人が解決したいと思っていることをクリアするための手助けを行うのです。その時に持っている知的・身体的な能力を十分に活かして、心身共に抑制されることなく、心豊かに生きることが認知症ケアにおいて忘れてはいけない考え方です。そのために、コミュニケーションを通してその人の心や希望を知ることが必要であり、その際に有効なのがバリデーションという技法なのです。
ある特別養護老人ホームでこのバリデーションを行ったところ、陰性の感情が少なくなり、前向きな感情傾向が上昇したとのことです。
関連性の高い「ユマニチュード」とは
バリデーションと共に介護業界で注目されているのが、ユマニチュードというケア技法です。フランスで生まれたこの技法はバリデーションと似たところがあり、みつめる・触れる・話しかける・立つように支援するという4つの考え方に基づいています。
認知症の人は視野が狭くなっている場合が多いので、その人の目線に合わせてコミュニケーションをとるようにします。また、優しく話しかけるようにし、嫌がらない範囲で可能なかぎりスキンシップを行います。また、尊厳を維持するために立つことをサポートします。具体的には150もの項目があるので、全てをすぐに実践することは簡単ではありませんが、できることから始めて大丈夫なのだそうです。
その他の有効なケア
バリデーションやユマニチュード以外にも注目されている認知症ケアの方法がありますので、一例を紹介します。情緒の安定や問題行動の減少に役立っているのが、ペット療法です。動物に触れたり一緒に遊んだりすることで、興奮を抑えて穏やかな気持ちを保つのに効果があるようです。犬や猫などのペットとして身近な動物だけでなく、施設によってはポニーやフラミンゴなどの大型の動物を飼育しているところもあるそうです。
また、自発性や集中力、意欲面を向上させ、精神機能の活発化に役立っているのが絵画療法です。絵の具やクレパスなどで絵を描くことを通じて、自分の気持ちを表現したり、他者との交流を図ることができます。
日常生活の中でも試してみよう
バリデーション療法のテクニックは、豊かなコミュニケーションや信頼関係の構築にとても役立ちます。多くの項目がありますが、その1つひとつはすぐに実践できるものなので、まずはできそうなことから始めてみましょう。
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