バリデーションという手法の起源と基本姿勢

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2020.04.01

価値観の共有を目指す手法

介護業界でのバリデーションの起源

認知症ケアにおけるコミュニケーション技法としてのバリデーション(バリデーション療法)は、1963年にアメリカのナオミ・ファイルというソーシャルワーカーによって生み出されました。認知症の人は徘徊をしたり大声を出したりすることも稀ではありませんが、これら全ては意味のある行動であると捉え、なぜそうするのかについて理解しようとする態度を基本としています。接する際にはごまかしたり嘘をついたりせず、真の訴えを引き出すための信頼関係の構築を重視しているのです。
ファイルさんは介護の現場で働いていましたが、当時のケアの方法に疑問を持っていました。認知症の人は、自分が認識しているものと職員から伝えられる「真実」との相違があった際に混乱してしまい、大声を出したり暴力的になってしまう場合がありますが、その際には鎮静剤を投与したり身体拘束するのが一般的でした。しかしファイルさんは認知症の人のそういった行動にも必然性があるはずだと考え、心穏やかに過ごすためのコミュニケーション技法の確立を目指すようになったのです。

介護業界でのバリデーションの起源

感情を大切にする関わり方

たとえ認知症であっても、感情は最期まで失うことがありません。記憶力や体力が衰えてきたとしても、喜びや怒り、悲しみなどの気持ちはしっかりと感じているのです。そしてそこには必ず、そのような気持ちになった理由が存在します。
バリデーション療法では、怒りや悲しみなどのネガティブな感情であっても表に出すことを良しとしています。そして、ケアする側が認知症の人の感情を否定したり無理に抑え込むことなく、価値観を共有してその理由を探求することを目指します。それによって心のわだかまりや人生の課題がみえてくれば、本人が解決に近付くためのサポートをすることもできるのです。

感情を大切にする関わり方

話を「聴く」ということ

誰かに話をしている時、相手が「うん、うん」と相槌を打っていたとしても「この人は私の話を聞いていないな」と感じたことはないでしょうか。本当に理解しようとしているかは、自然と伝わるものなのです。認知症の人でもこれは変わりません。
バリデーション療法で特に重点を置いているのは「傾聴」の姿勢です。適当に話を合わせたりごまかしたりするのではなく、しっかりと理解し、その思いに近付こうとするのです。「部屋に誰かがいる」と訴えているのならば、「そうですか、誰でしょうね」と受け流したり、「誰もいませんよ」と否定したりするのではなく、どこにいるのですか、どんな人ですか、と本人が感じている世界に踏み込んで共感的に関わるのがバリデーション療法です。ただ言葉を「聞く」のではなく、知ろうとする気持ちを持って「聴く」のです。こういった関わりを続けていくと、認知症の人のストレスや不安を軽減し、自発的にコミュケーションをとろうとするなどの前向きな変化がみられるそうです。

話を「聴く」ということ

日常生活の中でも試してみよう

具体的な実践方法

バリデーション療法のテクニックは、豊かなコミュニケーションや信頼関係の構築にとても役立ちます。多くの項目がありますが、その1つひとつはすぐに実践できるものなので、まずはできそうなことから始めてみましょう。

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